
今さら聞けない『とと姉ちゃん』モチーフ『暮しの手帖』の謎。

愛媛県の宇和島出身。現在は横浜市で会社勤務。NHK連続ドラマ『エール』裕一(窪田正孝)音(二階堂ふみ)の主人公とその他ドラマ登場人物をモデル、古関裕而と妻金子の史実と時代背景を比較しながら、このブログでもっとドラマが楽しく見られたらいいなと思っています。
『とと姉ちゃん』NHK連続ドラマでは主人公常子が商品試験をしょうと言いだし、『わたしの暮らし』で商品試験がスタートしました。
『暮しの手帖』の元社員の方から商品テストは編集長の花森安治が言いだしたのだ、『事実とは違う』とNHKに苦言を言われています。
NHKは当然、『とと姉ちゃん』は『暮しの手帖』をモチーフとした架空の物語なのだから問題はないとかんかられているようだが、テレビの視聴者を誤認させることに果たして問題はないのだろうか。
なんだか複雑な気持ちがします。
史実では間違いなく『暮しの手帖』の商品テストは花森安治からの申し出でした。
また、花森安治もアメリカの雑誌『コンシューマーレポート』の商品テストをそっくり真似て『暮しの手帖』の名物企画としたのものなのです。
★『コンシューマーレポート』とは?
アメリカで非常によく知られた雑誌に『コンシューマー・レポート』があります。
雑誌の購読者は450万人、有料ウェブサイトの登録者は300万人です。
トヨタもホンダも畏れる存在!
米コンシューマーレポートの謎
http://diamond.jp/articles/-/1105
日本でも毎年、アメリカの「ベストオブカー」を発表することで良く知られています。
1936年に『コンシューマーレポート』は創刊されました。
『コンシューマーレポート』はひとことで説明するとすれば、消費者のための商品情報誌です。
自動車、家電、キッチン製品、携帯電話といった商品から、保険、ホテル、エステなどのサービスまで、同誌が独自のテストや調査を行い、その結果を詳しい評価基準にそって得点として出します。
『コンシューマー・レポート』誌は、弱い立場にいる消費者を護るために1930年代に創設されたコンシューマー・ユニオン(消費者組合)という名前のNPOが主体となっています。
コンシューマー・ユニオンは、当時、企業の過剰な広告に踊らされて、不良品や粗悪商品を買わされていた消費者を教育し、食品やストッキングなどの商品をテストして評価するといったことを始めました。
『コンシューマー・レポート』のテストはかなり専門的なものです。
たとえば、自動車の場合、テストされるのは50項目以上。加速やブレーキ、燃費、騒音はもちろんのこと、緊急時のハンドリング操作、オフロードでの運転、乗り心地、荷物のスペースなども含まれる。
また、専門のテスト・トラックでの走行状態、数日間の家族旅行での使い勝手なども評価の対象。
新車状態でのテストに加えて、経年の故障具合なども継続してレポートされる。
またオーブンならば、過熱具合とか、実際にクッキーを焼いた際のムラなどもテストされ、電動ドライバーならば、100回ほどもネジを回してみて、その耐久性を調べたりする。
ともかく、テストの方法が科学的で徹底しているのである。
さて、この『コンシューマー・レポート』は、消費者が買い物をする際によく参考にされている。
冷蔵庫を買いたいがどこのメーカーがいいか。
掃除機はどの製品がお買い得か。新車が発売されるシーズンには、自動車特集を組む『コンシューマー・レポート』は飛ぶように売れています。
★『コンシューマーレポート』の商品テストとは
1.企業協力を一切排除した、公平な調査であること。
2.調査結果が科学的なデータで評価されること。
3.米国で参照する購読者が圧倒的に多いこと。
製品をテストするに当たって、企業から製品を提供してもらうのではなく、すべてのテスト製品を米国内にある市販店から自腹で一般購入します。
市販品をテストしているため、メーカーはブーストアップなどの特殊仕様を施すことができず、公平性が保たれるようになっているわけです。
テストでも企業関係者は排除し、購入した製品を同本部ラボラトリーにいる専門のエンジニアスタッフと一般消費者が性能を調査します。
それぞれ製品テストは複数回行なわれ、統計の専門家も交えた科学的なデータに基づいて各項目を5段階評価。
最終的には、価格や故障頻度、メーカー対応まで考慮した「総合のリーズナブル評価」までランク付けされます。
なんだかどこかで聞いたような話ではありませんか?
『暮しの手帖』花森安治は1911年生まれ『コンシューマーレポート』が創刊された1936年は25歳です。
1936年は昭和11年、日本では二二六事件が起きた年です。
★『暮しの手帖』は『コンシューマーレポート』のパクリだった。
この時期、まだ花森安治は『コンシューマーレポート』は知らなかったと思います。
戦後の『暮しの手帖』創刊後に花森安治がアメリカの雑誌『コンシューマーレポート』を見て『暮しの手帖』の商品テストをスタートしたものでした。
言い方は悪いですが『暮しの手帖』商品テストは『コンシューマーレポート』のパクリだったのです。
『とと姉ちゃん』NHK連続ドラマでは『わたしの暮らし』の商品テストの公開試験が始まりました。
<明日のとと姉ちゃん>9月14日 第141回 運命の公開試験 “最大の敵”赤羽根を追い込む
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160912-00000032-mantan-ent
赤羽根役の古田新太さん、追い込められた時にどんな顔をするのか、なんだか楽しみですね。
『わたしの暮らし』のモデル『暮らしの手帖』は1953年(昭和28年)からスタートした商品テストはドラマと同じように、日本中に大反響を呼びます。
★ドイツの商品テスト雑誌の歴史
1659年日本と同じくドイツでもドイツ消費者団体連(AgV)が、トースター、 コーヒーミル、アイロン、圧力鍋などの品質について、批判的な目で比較し始めました。
ドイツでも家庭用電化製品でいろんな問題が起きていたようです。しかし、調査結果を雑誌 として発表する経済的余裕がなかった上に、消費者の反響もそれほど大きくはなかった。
1961 年アメリカ の『コンシューマー・リポーツ』(Consumer Reports)をモデルにした商品テ スト誌『DM』が、1 人のジャーナリストの手によって創刊されました。
ナイロン ストッキングと洗濯機のテストが大当たりしたことにより、1 年後には 40 万 部発行の雑誌に成長。
間もなく、独自の商品テスト機関も完成し、滑り出 しは順調だった。
ところが、企業広告収入によってテスト機関を運営していたことが誤算とな ります。
高額な広告料を支払ったメーカーから圧力を受け、不公正なテスト結果が 掲載されるようになった。
消費者の信用を失った同誌は、短期間のうちに売り 上げを激減させた。
DM』誌の一時的な成功から、商品テスト誌に需要があることが証明され ます。
一方、同誌が短期間で転落した事実から、テスト機関の独立性、テスト実 施者の中立性が不可欠であるという教訓を得た。
1962年首相アデナウアー氏は「中立的な商品テスト機関設置が必要である」という政府声明を出す。
ここで議論となったのが団体の法的性質である。
国の行政機関に位置づけると、 独立性が保障されなくなる。
経済的安定も不可欠なので、結局、民法上の財団 法人という形式に落ち着いた。
1964年、国からいかなるコントロールも受けず、独立し てテスト業務に専念できる商品テスト財団(STIFTUNG WARENTEST)が誕生しました。
財団の財政は、連邦食糧・農業・消費者保護省からの助成と、商品テスト誌 など出版物の売上げによって賄われる。
定款で広告禁止をうたうため、企業 からの広告収入は一切ありません。
★現代のドイツ商品テスト雑誌
現代、ドイツを代表する商品テスト誌『テスト』(test、商品テスト財団発行)の発行部数は毎月平均 59.5 万部、そのうち 47.7 万部が定期購読される人気雑誌である。
さらに、同財団の金融サービス比較情報誌『フィナンツ・テ スト』(FINANZ test)の月間発行部数 28 万 1000 部と合わせると、月 87万 6000 部に達する(2005 年度)。
ドイツの人口が日本の 7 割弱にすぎないこと を考慮すると、驚異的な数字であることがわかります。
ドイツでは同財団の認知度 が 96%に達し、そのうち 3 分の 1 の消費者が、商品・サービスを選ぶ際に同 財団発行の商品テスト誌を参考にするという統計もある。
これを裏付けるか のように、ドイツの書店では、商品テスト誌が平積みにされていることが多い。
日本では想像できないことです。
節約精神の発達したドイツ人は、新たな商品購入を考えるとき、必ず商品テ スト誌を参考にする。
買い替えの難しい大型家電製品ばかりでなく、シャンプー や食料品でさえ、商品テスト誌で予習してから購入する徹底ぶりです。
★日本の商品テスト雑誌の復活
『暮しの手帖』花森安治が始めた商品テストも『暮しの手帖』では平成19年に中止となってしまいました。
花森安治の商品テストの目的は、消費者のためではなく、メーカーにいい製品を作ってもらうことが目的だったのです。
現代、日本のメーカーがほんとうに消費者にいい製品を作っていると言えるのでしょうか?
わたしは現代の日本のメーカーは自分たちの都合のいいものを作っているとしか思えないのです。
日本でも、もう一度、消費者のために、いいものを作ってもらえるように以前の『暮しの手帖』のような商品テスト雑誌の復活を望みたいものです。