NHK連続ドラマ『エール』では佐藤久志(山崎郁三郎)が酒浸りの状態から、夏の甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」を歌い上げて復活するまでを描か

 佐藤久志の史実モデルは歌手の伊藤久男です。

 史実の伊藤久男はドラマと違っているのか?

伊藤久男の戦後

 伊藤久男は戦争中、『暁に祈る』『熱砂の誓い(建設の歌)』などの戦時歌謡で一世を風靡しました。

 昭和18年、赤紙が届くも痔の悪化で入院した病院の医師が伊藤のファンで、その計らいで、軍役を解かれ。

 その後は故郷の福島へ疎開。吹き込み、慰問時の度、上京していました。慰問先の山形で終戦を迎えます。
 戦後は、戦時歌謡を歌ったことでGHQに捕まるのではと恐れ、酒に溺れます。

 当時物資不足のため、メチルアルコールをしこたま飲み、声も人相までも変わってしまっていました。

 自分でも「再起不能」と語っていたほどです。

 古関裕而の助けもあり、1947(昭和22)「夜更けの街」で歌手に復帰しています。

暗い酒場の ダイスのかげに

ひょいとのぞいた 地獄の顔よ

煙りふきかけ 笑ってみたが

どこかさびしや 心の隅で

すすり泣くよな 胡弓のひびき

戦後の暗い自分のことを歌ったような歌詞です。

 作詞は菊田一夫、作曲は古関裕而の黄金コンビでした。

 「夜更けの歌」は松竹映画「地獄の顔」(マキノ雅弘監督)の劇中歌でした。

 映画「地獄の顔」はディック・ミネの歌う主題歌「夜霧のブルース」(作詞:島田磐也、作曲:大久保徳二郎)のほか、「長崎エレジー」(歌:ディック・ミネ、藤原千多歌、作詞:島田磐也、作曲:大久保徳二郎)、「雨のオランダ坂」(歌:渡辺はま子、作詞:菊田一夫、作曲:古関裕而)、「夜更けの街」(歌:伊藤久男、作詞:菊田一夫、作曲:古関裕而)の4曲が使われており、今見ると随分贅沢なラインナップで、これらの曲はいずれも大ヒットしました。

 この映画の劇中歌に友人の伊藤久男を推挙し伊藤久男を歌手として復帰させたのは古関裕而でした。しかも作詞は菊田一夫です。菊田一夫も彼の復帰に一役かっていました。

 古関の友達をなんとか以前のような歌手に復帰させたいとの思いがひしひしと伝わってきます。

 やっと復帰した伊藤久男は「イヨマンテの夜」で再び人気が再燃。「あざみの歌」「山のけむり」といった抒情歌も見事に歌いこなし、ヒットさせたのです。

 1948(昭和23)古関裕而が作曲した「栄冠は君に輝く」のオリジナルレコードの歌手は伊藤久男でした。

 「栄冠は君に輝く」は合唱団の歌よりも夏川りみの歌より、どんな歌手の歌よりも伊藤久男の歌が1番だと思います。

 佐藤久志役のミュージカルプリンス山崎郁三郎も綺麗な声で惚れ惚れしてしまいます。伊藤久男が歌った「栄冠は君に輝く」を山崎郁三郎だったらどんな風に歌うのか、なんだかとても楽しみです。