NHK連続ドラマ「わろてんか」大正10 年(1921年)秋。 


伊能は、大阪郊外の宅地開発と活動写真の事業は成功を収め、日本の娯楽産業を牽引するほどの存在となっていました。


その伊能が風太を挑発しました。活動写真が寄席を負かす日が来るのは遠くないと。


高橋一生演じる伊能栞、いつもスーツをビシと着て堅実な実業家に見えてかっこいい。


なんだか憧れてしまいます。


伊能栞( 高橋一生 )史実のモデルは阪急グループや宝塚歌劇団創設者の小林一三です。




写真の小林一三さん素敵です。


順調満帆の人生だったかと羨ましい限りですが、彼にもいろんなことがあったようです。


特に彼の結婚がたいへんでした。

愛の修羅場。伊能栞( 高橋一生 )史実モデル小林一三の結婚


小林一三もかっては三井銀行の社員でした。


まだ20歳代の頃の話をです。


三井銀行大阪支店では上司だった岩下清周が去ったあと、三井銀行大阪支店次長としてやってきたのはハーバード出のエリート・池田成彬でした。


性格的にもそりが合わず、岩下一派と見られた小林一三は出世の見込みもないありさま。


彼もまたサラリーマンとして人間関係で悩みます。


大阪支店の中で悶々とした日々を過ごしていましたが、やがて名古屋支店に転勤となります。


しかし、名古屋支店に移っても小林は仕事に集中できません。


大阪時代に知り合った9歳年下の芸妓見習いコウと逢瀬を繰り返し自堕落な生活になっていきました。


名古屋支店長から大阪支店長へと栄転していく平賀敏が


「素人の女性と結婚したら大阪に呼んでやる」


小林は乱れた生活から抜け出るために、身を固めようと決意し親戚から送られてきた見合い話に乗って結婚します。


明治32年( 1899年)8月大阪支店へと転勤になります。


東京で結婚式を挙げた高麗橋一丁目の社宅が空くまでの2カ月間という約束で大手通りにある友人の持ち家を借り、新婚旅行代わりに大阪へとやってきます。


この時の心境を小林一三はこう述べている。


「私がどんなに不行儀であったとしても、逃げてゆくといふが如きは男の顔に泥を塗ったもので、意地からにも帰って貰はなくてもよろしい、と言ひがかりのやうな強がりを言ひ、それよりも、見合ひの出来なかった写真のお嬢さんと見合ひをしたいからお願ひする、と東京へ手紙を書いた。


何といふづうづうしい厚顔しさであったらう。


常識から考へてもこの場合、さういふ身勝手の話を、臆面もなく持出すべきでないにも拘らず、私は細君を貰ったといふ美名を維持したかったのである、それは三井銀行員としての体面にこだはってゐたからである。」


小林一三著『自叙伝』より


新妻は東京の下町出身で大阪が物珍しい。


彼女を喜ばせようと、到着した翌日の夜、今橋西詰の橋の下(現在の中央区今橋一丁目付近)から納涼船に乗りました。


子どもっぽいところのある彼女は、船べりをたたいたり、手で川の水をすくったりして大喜びだ。


彼はそんな様子を眺めながら、(これなら永く愛しあうことができそうだ)そう思った。


ところが新婚早々、彼は新妻を裏切る行動に出ます。


愛人のコウをなだめるため、有馬温泉への旅行に出かけるのです。


それも銀行に結婚届を出した土曜日の午後に出発しています。


銀行には夏期休暇を申請し、新妻には銀行の同僚たちとかねて約束していた旅行なのだと言い繕って出てきます。


向かった先は「兵衛」秀吉からその名を拝領したとされる由緒ある老舗旅館。


そんな高級旅館に泊めてやってもコウの怒りは解けなかった。

 

彼女は平素から無口であるが、有馬に居った二日間、何もしゃべらなかった、よくこんなに黙ってばかり居られるものと思った、対話は形式の単語にすぎない、枕をならべて眠る。


『少し笑ったらばどう』


『をかしく無いのに笑へませんわ』


といふのである。


私もまけぬ気になって黙って居った。


突然、唇をもってゆく、横を向くかと思ひの外、ジッとして静かに受ける、眼と眼が会ふと鋭く何かに射られたやうに私の良心は鼓動するのである。


そして彼女の眼底から、玉のやうに涙が溢れてくる、頬に伝ふ幾筋かの流を拭きもせず、ジッと私を見守るのである。


恨むとか、訴ふるとかいふ、さういふ人間的情熱の表現ではない、神秘の世界に閃く霊感的の尊厳に威圧せられるが如くに、『私がわるかった、わるかった』と、私の声はかすかにふるふのである。


彼女は冷然として、いとも静かに私の手から離れ、そして黙々として知らざるものの如くに寝入るのである。


私は夏の夜の明けやまない暁近くまで輾転反側した。」

 

当初は2泊の予定だった。3日目に有馬を出てコウを家まで送り届け、さて帰ろうとしたところ、手を放してくれない。


振り払えばいいだけなのだが、それのできない彼は誘われるまま2階に上がりこみ、また有馬と同じような一夜を明かしてしまう。


経営者になるまでの彼の人生は、優柔不断な逸話のオンパレードだ。


残念ながら、今と違って家に電話を入れるというような手軽な連絡方法などない。


何も言わずに予定より1泊余計に泊まっては、新妻が不審に思わないはずもなかった。


有馬温泉で3日間すごしたのち帰宅すると、新妻は実家に帰ってしまっていた。


妻に逃げられたことで、もともと悪かった彼の社内での評判はがた落ちとなる。


その後東京に転勤したあとも冷や飯を食わされ、やがて元上司の岩下清周から証券会社づくりの誘いを受け、退社を決めた。


この間、小林一三はコウと再婚している。


小林一三は結婚していましたから、これは不倫と言うのでしょうか。


芸妓コウは結婚する前から付き合っていましたが、彼は結婚してしまいます。


それをまた、奥さんから奪ったのですから略奪愛と言うのでしょうか。


結局、男は女の涙には勝てなかったと言うことなのでしょう。


小林一三と芸妓コウはこの後、結婚し幸せな人生を送っています。


不倫も略奪愛も結局は当人たちが幸せになればそれでいいのではないでしょうか。